2004年千葉大学生の活動報告

 2004年度は、千葉大学がはじめて普遍教育科目(教養科目)の綜合科目として「ボランティア実習」を取り入れました。山仲間アルプでもお役に立ちたいと思い、受け入れ先NPO団体として登録させていただき、2004年度は2名の方が参加してくださいました。この度、千葉大学から2004年度「ボランティア実習」報告書が発行され、そこに掲載された報告から、山仲間アルプの事業に参加していただいたOさんの報告文を、大学側とご本人の了解を得て、ここに掲載させていただくことにしました。また、Kさんからも報告をいただき、ここに掲載させていただきます。

ボランティア実習報告  Oさん  Kさん

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ボランティア実習

記:Oさん

 私がお世話になった実習先は「山仲間アルプ」というNPO法人であった。山仲間アルプでは月に2~3回、障害者も健常者も一緒に登山やハイキング、講習会などの活動を行っている。私は5回の山行と講習会に1回参加した。会員の障害者の中には視覚障害の方がいて、歩く時にその人達のサポートをする。サポートというのは視覚障害者が健常者の肩やリュックに触れ、健常者は危険なところがある時にそれを知らせながら、一緒に歩く、というようなものである。視覚障害の程度によって、どのぐらいサポートが必要かは違うが、視覚障害の方に頼まれたり、不便そうな時にサポートをする。登山のコースの中ではサポートする人は何人かで交代をしながら歩いていた。サポートをする時はやはり、サポートをする側も緊張し、サポートをされる側も有り難いけれども申し訳ないとか劣等感などを感じるようだが、それらをお互いが楽しむことで乗り越えてしまおう、というのがアルプの理念であるように感じた。

 活動に参加して一番印象的だったことは、障害者の方たちがとても明るく、前向きであったことである。会話の中で出てきた、「自分が障害者であることをほとんど意識していない」「明るく前向きであるのが普通である」という言葉が特に印象に残っている。これらの言葉どおり、障害があるからできないなどと自分で壁をつくったり、劣等感をもったり、いじけたりしているところが全くなく、むしろ、次々と新しいことに挑戦し、そのための努力をしていた。もちろん、そのようになるまでには、いろいろな経験や時間があったのだろうか、とも考えられるが。障害者の方たちと触れ合うことによって、私もいろいろなことに挑戦してみようという意欲がわいてきた。挑戦して努力すれば、多くのことは乗り切れるのだろうという気持ちになった。

 また、健常者の会員の方たちの雰囲気もよかった。「ボランティアをしている」という意識はあまりないように見えた。それよりも、山登りの仲間と一緒に登山やそこでの会話を楽しみ、皆で一緒に楽しむために、仲間の中のサポートを要する人を「お手伝いしている」というような雰囲気であった。サポートは強制ではなく、できる人が引き受けるという形であるので、中には自分で歩くので精一杯だからサポートはしないという人もいるし、登山のコースの中でもなだらかな道や傾斜のきつい道、細い道、歩きやすい道など経験によって引き受ける部分が違っていた。つまり、無理をせず、それぞれが自分にできる力を発揮すればよい、ということであった。

 私は今までボランティアというものをしたことがなかった。だから、最初は緊張していて頑張らなければいけないと気張っていたと思う。しかし、活動に参加していくと、頑張ろうと気張るよりも登山やまわりの方たちとの会話を素直に楽しむことの方が重要であると思うようになった。ボランティアというものは、人に何かをしてあげるものなのだろうと考えていたから気張っていたのだと思うが、自分ができることを自然に手伝うことで、自己満足でもなく、何かしら人の役にたっていることが分かり、気が楽になった。

 それから、障害者も健常者も違いというものは、あまりないのではないかと思うようになった。障害者、健常者を問わず、人には必ずいくつか不得意なことがある。不得意なことは自分ひとりではこなせないから、自分以外の人やものに手伝ってもらうものだ。障害者がもっているハンディキャップも不得意なものの一つだと考えられるのではないかと私は思う。だから、人に手伝ってもらうのは自然であるし、それ以外に得意なこともたくさんあり、他の人たちを自然と手伝っている。そのように考えると、障害者、健常者という言葉で分けることに少し違和感を覚える。表記するためには仕方がないが、このレポートを書いていても変な感じがする。また、障害者の方たちはサポートが必要な時は素直に周りの人に頼むので、本人も周りも恐い思いをせず安心していられる。私も自分一人ではできないことをする時に、素直に周りの人に手助けを求められるようになりたいと思う。人に手伝ってもらえば、一人ではできないことも諦めずに挑戦することができるだろう。

 山仲間アルプの活動に参加して、上記のような様々なことを感じられるようになったが、それはアルプの活動が自然の中で行われるから、という影響もあると思う。自然は、どんな人に対しても平等にその恵みを与えてくれる。その中にいると、気持ちが良くなり、同じものを仲間と一緒に感動することができる。川のせせらぎが聞こえたり、心地よい風が吹いたり、素晴らしい景色を見たりすると、その一つの現象だけで、それを感じた人皆を感動させてくれる。また、大勢で行く登山は一人だけゆっくり、または速く歩くことはなく、皆同じペースで歩くため、自然と協力し合い、喜びを分かち合うことができる。今回の実習では、いろいろなことを教えてくれる偉大な自然の力も改めて感じることができた。

 実習を引き受けていただいた山仲間アルプの網干さんや、そこでお会いした方たちに、とてもお世話になり、多くのことを勉強させてもらった。これからも、山仲間アルプの活動を含め、日常などのいろいろな場面でボランティア、人の役にたつことをしていきたいと思う。このような機会を得ることができてよかったと思う。どうもありがとうございました。

 

 

ボランティア活動に参加しての感想と学んだこと

記:Kさん

 山仲間アルプとの出会いは、思いがけないものでした。第一希望の場所が来年からということで、第二希望の場所でいいかなという気持ちで選んだのがきっかけでした。しかし、この出会いは、私にとってかけがえのない出会いでした。始めは、費用が掛かるとの問題もあったので、Y先生にも多少の迷惑をかけてしまいましたが、実際に活動してみるととても楽しくて、やりがいのあるものでした。なんと言っても会員の年齢層は幅広く、20代~70代の高齢者の方まで登山を楽しんでいました。そして、メンバー全員仲が良く、登山中の雰囲気はとても和やかでした。

 活動内容の一つである視覚障害者の方の誘導と補助についてですが、意外と思い切ってやればできるのだなと思いました。最初の頃は、視覚障害者の方にいろんなことを指摘されながら行っていましたが、慣れてくると積極的に進んでやるようになりました。気をつけなければいけないことは、全盲の方と弱視の方の補助の仕方が違うということです。全盲の方のサポートも弱視の方のサポートもそうですが、必ず二人で行います。弱視の方のサポートについては、自分が前で誘導するときは絶対に後を振り向いてはいけません。多少見えているので前のリュックを見失うとそのまま進んでしまう可能性があるからです。あとは、その人にあった対応の仕方を工夫すれば問題なくサポートすることができるのだと思いました。
今回のボランティア活動で学んだことは、視覚障害者と健常者が共に楽しむ大切さです。現在の社会では、健常者中心の社会といっても過言ではなく、日常生活で障害者と共に楽しむということはめったに体験できないからです。登山中の何げない会話や登山が終わってからの「ありがとう」の一言でどれほど嬉しい気持ちになり、励みになったのだろうか。ボランティア活動を通して、障害者の気持ちと健常者の気持ちが通じ合ったように思いました。山仲間アルプでのボランティアは一人ではありません。会員一人ひとりが共に助け合い、お互いを尊重しあう立派な団体だと私は思います。私はボランティア活動が終わっても今度は個人的に参加したいと考えています。これからもこの出会いを大切にしていきたいと思います。
また、これからボランティア活動を体験されるみなさんへ、登山なので天候によっては日程変更の可能性もあるので、一年間という長い目をもって活動に参加されると良いと思います。あと、費用の方が気になる方は、気軽にリーダーが対応してくれるので心配せずに相談してください。以上で報告を終わりにしたいと思います。

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